企画業務型裁量労働制に関する指針等の一部改正
労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示(令和5年厚生労働省告示第115号)
★概要のみ紹介
[1] 労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針(以下「指針」という。)の一部改正
1 企画業務型裁量労働制の対象労働者の要件
① 対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が労働者の賃金水準を労使委員会に示すことが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
② 使用者が、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合は、労使委員会に対し、事前に説明を行うことが適当であることに留意することが必要であることとされた。
2 本人同意・同意の撤回
① 制度の適用に関する同意に当たっては、使用者は、労働者に対し、制度概要等について明示した上で説明することが適当であることとされた。また、十分な説明がなされなかった等により、同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果は生じないこととなる場合があることに留意することが必要であることとされた。
② 同意の撤回の手続を決議するに際しては申出先の部署等を明らかにする必要があることや、使用者は同意の撤回を理由として不利益な取扱いをしてはならないものとするとともに、同意の撤回後の処遇等について、委員はあらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
3 裁量の確保
① 裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを明確化することとされた。
② 使用者及び委員は、労働者の時間配分の決定等に関する裁量が失われたと認められる場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することが必要であることとされた。
4 健康・福祉確保措置
① 「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法第66条の8の3により把握が求められている「労働時間の状況」と同一であることを明確化することとされた。
② 健康・福祉確保措置として定めることが適切な内容として、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導を追加し、決議することとされた。
③ 委員は、指針に規定されている健康・福祉確保措置を決議するに当たっては、「事業場における制度的な措置*①」と「個々の対象労働者に対する措置*②」に分類した上で、それぞれから一つずつ以上を実施することが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
*①「事業場における制度的な措置」とは、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)及び年次有給休暇の取得促進をいう。
*②「個々の対象労働者に対する措置」とは、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導、代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、心とからだの健康問題についての相談窓口設置、適切な部署への配置転換及び産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせることをいう。
④ 使用者及び委員は、健康・福祉確保措置として、対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)を決議することが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
⑤ 委員は、健康・福祉確保措置の結果を踏まえ、特定の対象労働者に制度を適用しないこととする場合における配置及び処遇又はその決定方法について、あらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
5 みなし労働時間の設定と処遇の確保
みなし労働時間について決議するに当たっては、委員は、対象業務の内容、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準とし、相応の処遇を確保する必要があるものとしたこと。
6 労使委員会の実効性向上
① 委員は、委員の半数以上からの申出があった場合に限らず、制度の実施状況等について定期的に調査審議するために必要がある場合には、労使委員会を開催する必要があることに留意することが必要であることとされた。
② 労使委員会に求められる役割として、労使委員会には、決議の内容が指針の内容に適合するようにするとともに、決議の有効期間中も、定期的に制度の実施状況に関する情報を把握し、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを調査審議し、必要に応じて、運用の改善を図ることや決議の内容について見直しを行うことが求められることとされた。また、委員は、労使委員会がこうした役割を担うことに留意することが必要であることとされた。
③ 使用者は、過半数代表者が必要な手続を円滑に実施できるよう十分に話し合い、必要な配慮を行うことが適当であることとされた。
④ 過半数代表者が適正に選出されていない場合等には、労使委員会による決議は無効になること及び労使を代表する委員それぞれ1名計2名で構成される委員会は労使委員会として認められないこととされた。
⑤ 使用者及び委員は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、使用者からの説明は、決議に先立って行う必要があることに留意することが必要であることとされた。
⑥ 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを労使委員会で調査審議し、運用の改善を図ることや決議の内容について必要な見直しを行うことが必要であること等を踏まえ、使用者及び委員は、制度の実施状況の把握の頻度や方法を運営規程に定める必要があることに留意することが必要であることとされた。
⑦ 委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況を開示することが適当であることに留意することが必要であることとされた。
7 苦情処理措置
① 使用者及び委員は、労使委員会に苦情の申出の窓口としての役割を担わせる等、委員が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことに留意することが必要であることとされた。
② 苦情処理措置に関して、使用者は、労働者から制度の適用に関する同意を得るに当たって、苦情の申出先や苦情の申出方法等を書面で明示する等、具体的内容を説明することが適当であることに留意することが必要であることとされた。
8 その他
その他所要の改正を行うこととされた。
[2] 労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(以下「専門業務告示」という。)の一部改正
銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務を、専門業務型裁量労働制の対象とすることとされた。
この告示は、令和6年4月1日から適用
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