働き方改革特集 はじめに・全体像
2018/10/19
まず、はじめに、法律の正式名称と可決成立までの経緯、主要規定の施行・適用の時期をご覧ください。
はじめに
正式名称
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」
経緯
- 平成30 (2018)年4月6日に第196回国会に提出
- 平成30 (2018)年5月31日に衆議院で可決
- 平成30 (2018)年6月4日から参議院での審議開始
- 平成30 (2018)年6月29日に参議院でも可決・成立
- 平成30 (2018)年7月6日に官報に公布(雇用対策法の改正のみ施行)
- 主要規定は、平成31(2019)年4月1日から順次に施行・適用
主要規定の施行・適用の時期
法律 | 中小企業以外 | 中小企業 ※次項参照 |
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雇用対策法
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2018年7月6日 (附則第1条第1項) |
||
労働基準法 | 時間外労働の上限規制 | 2019年4月1日 | 2020年4月1日 (附則第3条第1項) |
その他改正事項
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2019年4月1日 | ||
中小企業に割増賃金(50%)を適用(月60h超) | ー | 2023年4月1日 (附則第1条第3項) |
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労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、じん肺法
|
2019年4月1日 | ||
パートタイム労働法・労働契約法
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2020年4月1日 (附則第1条第2項) |
2021年4月1日 | |
労働者派遣法 派遣労働者について、派遣先の労働者との不合理な待遇差を禁止 |
2020年4月1日 (附則第1条第2項) |
※ここでいう中小企業の規模
事業の業種 |
資本金の額または出資の総額 |
|
常時使用する労働者の数 |
原則(下記の業種以外) |
3億円以下 |
または |
300人以下 |
・小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
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・卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
|
・サービス業 |
5,000万円以下 |
1中小企業に該当するか否かは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」で判断されます。
2これらの要件に該当するか否かは、事業場単位ではなく、企業単位で判断されます。
全体像
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を推進するため、次のような措置を講ずる。
Ⅰ 働き方改革の総合的かつ継続的な推進
働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、 国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定めることとする。
【雇用対策法の改正】
施行期日⇒公布の日
<補足>雇用対策法の役割の変化に伴い、その題名を次のように改正
現 行⇒雇用対策法
改正後⇒労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
Ⅱ 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
1 労働時間に関する制度の見直し【労働基準法の改正】
➊時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定。
※自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予措置あり
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月(中小企業は平成32〔2020〕年4月)
❷月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。
施行期日⇒平成35〔2023〕年4月
❸労働時間の状況を厚生労働省令で定める方法(※)により把握しなければならないこととする。
【労働安全衛生法の改正】
※省令で使用者の現認や客観的な方法による把握を原則とすることを定める
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
❹10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日については、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
❺フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
❻高度プロフェッショナル制度※を創設。
- ※職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
2 勤務間インターバル制度の普及促進【労働時間等設定改善法の改正】
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
3 産業医・産業保健機能の強化 【労働安全衛生法等の改正】
事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。
※産業医の選任義務 のある労働者数50人以上の事業場が対象など
施行期日⇒平成31〔2019〕年4月
Ⅲ 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
1 不合理な待遇差を解消するための規定の整備【パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正】
❶短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化する。
❷有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の確保を義務化する。
❸派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化する。
ほか
施行期日⇒平成32〔2020〕年4月1日
(❶❷の改正規定の中小企業への適用は平成33〔2021〕年4月1日)
2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化【パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正】
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化する。
施行期日⇒平成32〔2020〕年4月1日
(短時間労働者・有期雇用労働者に係る改正規定の中小企業への適用は平成33〔2021〕年4月1日)
3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備【パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正】
1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADR※を整備する。
- ※行政(型)ADR・・・紛争調整委員会によるあっせん等のこと。特定社会保険労務士であれば、単独で取り扱うことができる。
施行期日⇒平成32〔2020〕年4月1日
<補足>有期雇用労働者をパートタイム労働法の対象に含めることに伴い、パートタイム労働法(正式名称の題名を次のように改正
現 行⇒短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
改正後⇒短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律