成績不良を理由とする解雇 東京地裁で無効判決
ある情報システム関連サービス企業を不当に解雇されたとして、元社員の男性が解雇無効などを求めた訴訟について、平成29年3月8日、東京地裁が、解雇を無効とし未払いの給与の支払いを命じる判決を言い渡したとの報道がありました。 男性は、平成18年に子会社に出向。「業績が低い状態が続いている」として平成26年3月に解雇されたとのことです。 裁判長は、解雇直前の男性の業績評価が5段階の相対評価で下から2番目だったことなどから、「解雇するほど深刻ではなく、配置転換などを検討すべきだった」と指摘。「解雇権の濫用にあたる」とし、今回の判決に至りました。 上記のような業績不良・能力不足を理由とする解雇については、過去にも度々争われています。過去の裁判例をみると、労働者の能力が全体の中で相対的に低位であるというだけでは就業規則上の解雇事由に該当するといえないこと、企業には解雇回避(雇用維持)のために労働者の能力向上を図るための努力が求められることなどに言及して、解雇を無効とするケースが多いです。 なお、高度の職業能力を有することを前提として中途採用された労働者が期待された能力を発揮しなかった事案においては、企業に求められる解雇回避努力の程度が軽減されるなど、通常の労働者の場合よりも、解雇の有効性が認められやすい傾向にあります。 企業の立場から見た対応としては、就業規則の普通解雇事由に「勤務成績または業務能力が不良で就業に適さないと認められたとき」、「就業状況が不良で、社員としての職責を果たし得ないと認められたとき」といった条項を置いておくことが必要となります。その上で、その条項に該当するか否かを慎重に判断することが重要ですね。裁判例において、解雇回避努力が求められていることは覚えておきたいところです。
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