裁量労働制の対象者が労災認定 長時間労働で精神疾患
「建築設計会社において裁量労働制で働いていた社員(20歳代の女性)が精神障害を発症したのは、長時間労働が原因として、労働基準監督署が労災認定していたことがわかった」といった報道がありました。
労働組合(裁量労働制ユニオン)によると、会社は、その社員の入社時から、専門業務型の裁量労働制を適用し、働かせていたとのことです。
1日8時間のみなし労働時間に対し、実際は月100時間以上の時間外労働が常態化し、1日22時間程度の勤務日もあったようです。
2018年4月に精神疾患(適応障害)を発症しましたが、発症直前1か月の時間外労働は、過労死ライン(80時間)の2倍超の173時間程度だったようです。
社員は、専門業務型裁量労働制の対象業務である1級・2級建築士の資格を持っていなかったという報道もあります。
同社は、既に裁量労働制を廃止しており、「労災認定を真摯(しんし)に受け止め長時間労働の是正を進めている」とコメントしているということです。
裁量労働制は、実際に労働した時間数ではなく、労使で定めた「みなし労働時間」労働したものとみなす制度です。
使用者の指示を受けることなく、社員の裁量で労働時間を決めることのできる制度とされていますが、「定額働かせ放題」の制度などといった批判も出ています。
その対象者については、労働時間の状況も把握されていないのが実態のようで、問題視されていました。
そこで、働き方改革関連法による労働安全衛生法の改正によって、裁量労働制の対象者や管理監督者も含め、労働者の労働時間の状況を客観的な記録により把握し、面接指導などにつなげるといった規定が整備されています(2019年4月1日施行)。
時間外労働の上限規制の導入や年休の時季指定義務の創設といった改正の陰に隠れがちですが、そのような改正が行われていることも確認しておきましょう。
〔確認〕「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されますす(厚労省リーフレット)
≫ https://www.mhlw.go.jp/content/000497962.pdf
※このリーフレットの「Part2/Point1‐労働時間の状況の把握」をご確認ください。
※無断転載を禁じます