新入社員研修で自殺、労災認定 遺族は会社側を提訴
「大手製薬会社の新入社員(男性、当時22歳)が、平成25年に行われた入社研修中に、研修講師の言動で精神疾患(統合失調症)を発症し、過労自殺したとして、労働基準監督署が労災認定をしていたことが分かった。」という報道がありました。 今月8日、遺族が、同社と研修講師などを相手取り、1億円余りの損害賠償を求めて地方裁判所に提訴したことで明らかになりました。 遺族側によると、男性は、平成25年に同社に入社。直後からその年の8月までの予定で、同期約50人とともに、研修施設での「缶詰め」研修に参加。このうち4月に3日間、人材育成コンサルタント会社による「意識行動変革研修」と呼ばれる研修が行われたそうです。 「意識行動変革研修」では、人格を否定する言葉を浴びせられながら、「社会人の基本動作」を叩き込まれたということです。 男性が残した記録には、同期の前で講師から「吃音(きつおん=どもりなど)」であると指摘されたり、過去のいじめ体験を告白させられたことが書かれているようです。 その後、男性は、その年の5月に自殺してしまいました。 労働基準監督署は、これを労災認定基準(心理的負荷による精神障害の認定基準)の「ひどい嫌がらせ、いじめ」に該当すると判断。自殺から2年後の平成27年に、労災認定したとのことです。 訴訟については、遺族側はパワハラと長時間労働が原因と主張。製薬会社は「訴状が届いていないのでコメント出来ない」とし、研修講師側は「研修内容に問題はなく、自殺とも因果関係はない」とコメントしてるとのことで、今後の裁判で争われることになる見込です。 しかし、「意識行動変革研修」と呼ばれる研修は、行き過ぎた内容と言わざるを得ないですね。同期社員らからも、「軍隊みたいな研修」、「異様な雰囲気」、「最終的にはほとんどの受講者が涙を流す」などのコメントがあった模様です。 この報道の件は、新入社員研修などの社内研修に対する警鐘かもしれません。当たり前のことを再確認しておくべきです。 研修を実施する会社は、「できないことをできるようにする」ということに対して指導が前のめりになり過ぎていないか、注意する必要がありますね。研修を受けている方を威圧するような語り口も控えるべきで、罵倒するなんてことはもってのほかですね。 また、研修を依頼する会社においては、大切な社員を預けるわけですから、研修内容や研修を受けている社員の様子をチェックする必要がありますね。そして、両社の責任において、研修を受けている社員が過重な心的負荷(重いストレス)を感じていないかなどについても、アンケートなどを通して把握する必要がありそうです。
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